トラックの「順番待ち」が予約制になる──バース予約システムは荷待ちを消せるか
どうも、タイガです。今回のお届け物は「日本の運送業の取組み」編。テーマは**バース予約システム(トラック予約受付システム)**です。
以前、荷待ち時間の記事で「荷待ちは仕組みの問題だ」と書きました。今回はその仕組みを変える道具の話です。倉庫の搬入口の順番待ちを、先着順から予約制に変える。地味に聞こえるかもしれませんが、これが僕らの1日を1時間単位で変え得る話なんです。
そもそも「バース」ってなんだ
バースというのは、倉庫やセンターでトラックを着けて荷物を積み降ろしする搬入口の枠のことです。港で船が着く場所をバース(berth)と呼ぶのと同じ言葉ですね。
問題は、このバースの使い方が長いこと先着順だったこと。着いた順に並んで、空いたら呼ばれる。だからみんな、少しでも早く積み降ろししたくて開場前から並ぶ。朝6時に門の前にトラックの列ができて、8時の開場からバースが埋まりっぱなし──そういう倉庫を、僕はいくつも知っています。
まさにそれです。そして病院が予約制を入れたように、物流にも予約が入り始めました。それがトラック予約受付システム、通称バース予約です。運送会社やドライバーがスマホやパソコンで「明日の10時30分の枠」を予約して、その時間に着けばすぐ積み降ろしできる。仕組みとしてはそれだけ。でも、それだけのことが何十年もできていなかったんです。
ドライバー席から見るとこう変わる
予約がある日の朝は、景色が違います。開場前の門の前に並ぶ必要がない。指定の時間に合わせて走って、着いたら受付でチェックイン。順番が来たらスマホに呼び出しが飛んでくるので、それまで仮眠していてもいい。呼ばれたらバースに着けて、作業して、出る。
倉庫側にもメリットがあります。何時に何台来るかが前日にわかるので、フォークリフトや人の配置を組める。行き当たりばったりの荷受けが、計画的な作業に変わるわけです。
数字で見る効果──待機83分が24分に
ここが大事なところで、バース予約は「ドライバーが楽になる代わりに倉庫が損をする」道具ではありません。到着がバラければ、バースは遊ばず、人も遊ばない。待たせる側にも得があるからこそ、広がる見込みのある対策なんです。
荷待ち時間の記事で紹介した国の実態調査でも、荷待ち・荷役等の時間は1運行あたり約3時間から約2時間へと1時間以上減りました。その要因のひとつに挙げられているのが、法律に背中を押された予約システムなどの荷主側の取組みです。
法律も「予約せよ」と言い始めた
2025年4月に施行された改正物流効率化法は、荷待ち時間の短縮を荷主の努力義務にしました。そして国が示した取組みの判断基準には、トラック予約受付システムの導入がはっきり書かれています。もう「気の利いた倉庫が入れる便利ツール」ではなく、「荷主がやるべきこと」のリストに載ったわけです。
さらにさかのぼると、2023年6月に経産・農水・国交の3省が出したガイドラインでは、荷待ち・荷役の合計を1台あたり2時間以内にするルールが示されています(すでに2時間以内なら1時間以内を目指す)。この「2時間ルール」を守ろうとしたら、先着順のままではまず無理で、予約で到着を分散させるのがいちばんの近道になります。
それでも現場には課題がある
じゃあ予約が入れば荷待ちは消えるのか。現場感覚で言うと、まだ手放しでは喜べません。
1つ目は、枠の取り合い。 人気の時間帯──午前の早い枠──は予約開始と同時に埋まります。先着順の列が、画面の中の早押し競争に変わっただけ、という面もあるんです。運行を組む配車担当は、毎日この争奪戦をやっています。
2つ目は、システムの乱立。 バース予約のサービスは何社もあって、倉庫ごとに使うシステムが違う。A社の倉庫はこのアプリ、B社のセンターは別のアプリ、C社はまさかのFAX併用。1日に3件回るドライバーは、3つの画面と付き合うことになります。
3つ目は、予約しても待つことがある。 前の作業が押せば、予約時刻は平気でずれます。予約はあくまで「見込み」で、遅延の吸収までは面倒を見てくれません。それから、そもそも予約システムが入っているのはまだ一部の大きな拠点で、中小の倉庫は先着順のまま──という偏りも残っています。
4つ目は、荷待ちが「見えない場所」に移ること。 ここがいちばん言っておきたい課題です。予約時刻に遅れるわけにはいかないから、僕らは余裕を持って走って、手前のSA・PAで時間調整をしてから向かいます。かといって早く着きすぎても、倉庫の周辺は待機禁止のところが多い。つまり門の前の列が消えても、待つ場所が高速のパーキングに移っただけ、という日が現実にあるんです。しかも記録に残る「待機時間」は予約時刻や構内到着を起点に測るので、この手前の時間調整は統計のどこにも出てきません。83分→24分という数字の外側に、まだ見えない待ち時間が残っている──そこは正直に見ておく必要があります。
あります。待たされたとしても、予約時刻という「約束の記録」が残るからです。先着順の時代は「何時から待ったのか」を証明しづらかった。予約があれば、約束と実際のずれがそのままデータになる。荷待ちの記事で「記録に残った荷待ちだけが世の中を動かす」と書きましたが、予約システムはその記録を自動で作ってくれる装置でもあるんです。
タイガのひとこと
先着順の何がつらかったって、早く着くことでしか自分の時間を守れなかったことです。並ぶために早出して、そのぶん睡眠を削る。SA・PAの駐車マス問題で書いた深夜の満車も、元をたどれば「早く着いて待つ」が生んでいました。そして正直に言えば、予約制になった今も、時間調整のためにSA・PAで待つ運用は残っています。荷待ちの問題は、倉庫の門の内側だけでは終わらないんです。
それでも予約は、悪循環に入れる楔だと思っています。時間を指定されるのは窮屈に聞こえるかもしれないけれど、指定された時間は守ってもらえる時間でもある。枠の取り合いも、アプリの乱立も、見えない時間調整も、広がる過程で解いていくべき宿題でしょう。「並んだ者勝ち」から「約束を守り合う」へ。物流がそっちに進むなら、僕は歓迎です。
今日もご安全に。


